MESSAGEメッセージ

沖縄に来て驚いたこと。
野菜が高くて、弁当が安い。

原材料は東京より高いが、手間暇を加えたら東京より安くなった、と言うことである。つまり、付加価値の値段設定が極端に低い。この島では、「安い」とか「量が多い」ことが良いとされる。価格競争、安さを競い合うマーケティングが中心だ。

本来マーケティングは、4つの「P」で整理できる。商品・サービス(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)。価格以外にもやれる事はたくさんある。しかし、買う側だけでなく、売る側までもが「安いこと、量が多いこと=良いこと」と言う価値観で商売をしている。もちろん、「良い」ものを「安く」提供できる事が一番良い。しかしそれは、規模の経済を持つ大企業の得意分野であって、地方のローカル商工業者が価格競争に巻き込まれたら、負けてしまうのは必然。それでも、安さと量を大切にするのは、沖縄の人の優しさに起因すると、私は考えている。苦しい生活の中でも「お腹一杯食べてもらいたい」という優しさからではないか。しかし、それを続けていたら、沖縄で暮らす人達の生活は、いつまでたっても豊かにならない。

沖縄では、豊かな心で暮らしている人が多いと思う。しかし、経済的には苦しい人が多いのも現実である。マーケティングは、それを救ってくれるのではないか?経済的な豊かさをもたらすために、マーケティングを沖縄の地に根付かせたい。売る人も買う人も幸せになれるような、付加価値の高い商品・サービスを提供できるようにしたい。「内地のモノは上等」ではなく、沖縄の素晴らしさを、価値に転換したいのです。

沖縄の高い付加価値は何か?

これまで沖縄は、経済的発展を目的に、たくさんの物を作って来ました。しかしそれと引き換えに、たくさんの物も失って来たと思います。自然、文化、風習。それらを受け継いできた心。新しく作られた物は便利かもしれない。しかし、50年、100年、200年と受け継がれてきた物の付加価値は、お金では買えない、遥かに高いものがある。それが、何気ない日常の風景であったとしても、長い時間を掛けて育まれた自然・文化の価値は重厚であり、真の感動はそうした本物からでしか得られることは出来ない、と考えています。

つまり、沖縄が稼ぐための大切な付加価値は、これまで祖先から受け継いできた「自然」「文化」「風習」「考え」「教え」と言ったもので、これが経済的な豊かさをもたらす大切な資源だと思うのです。これからの沖縄は、作ることだけでなく、残すことにお金を投じるフェーズに入らなければいけないのではないか。ツクル沖縄から、ノコス沖縄へ。

私たち、ノコス沖縄では、沖縄の身の回りにある生活文化を消さずに残すことで、沖縄の付加価値に変えて行きたい、と思っています。歴史的価値が高い文化財や、世界遺産に登録されるような広大な自然は、公的機関が多額な費用を投じてでも守るべき物だと思います。一方で、先祖から受け継がれてきたような生活文化は、私たち生活者自身が守るべき物だと思うのです。しかもそれが、“心”の問題だけでなく、沖縄が“稼ぐ”ための大切な地域資源であれば、費用を投じてでも守るべき経済的合理性もあります。

地域課題を、ビジネスを通じて解決したい。

これは、私自身が掲げているテーマです。補助金やボランティアへの依存度が高い取組は継続しません。継続させるカギは、公益性と収益性の両立です。ノコス沖縄は、コトを扱う地域商社として、事業をスタートさせます。
対象は、姿を変えようとしている、身の回りの自然・生活に根付いた文化・道具・風習など。それらを残すヒト・技術・仕組みを作り、事業として成立させ、そのノウハウは地域に残して行きます。(ノウハウはオープンにしてシェアします。)
その第1号案件として、古民家をリノベーションした「旧金城邸オフィス」をスタートさせました。

最後に。名刺交換の時「いったい君の仕事は何だね?」と聞かれるでしょう。私が「コトを扱う地域商社です」と答えます。そうすると、「で、それは何だね?」となり、「地域課題を、ビジネスで解決する会社です」と返しますが、「どうやって?」と言われ、「マーケティングの考えをベースに、地域資源に付加価値を付け、外貨を稼ぐ仕組みを作ります」と。そんな、噛み合わない会話がしばし続いた後、消化不良のまま終了する。立ち話では、それが普通だと思います。ならば、牛が反芻(はんすう:食べたものを何度も口に戻して消化)するように、あとから見直して頂ける反芻サイトが必要と考え、ご用意させて頂きました。目を通して頂き、ありがとうございます。はじめましての方も、本当にありがとうございます。
沖縄の地域経済の、持続可能な活性化のために。お力添え頂けましたら幸いです。

2020年6月